Folk Tale

赤ずきんちゃん

Translated From

Rotkäppchen

AuthorJacob & Wilhelm Grimm
Book TitleKinder- und Hausmärchen
Publication Date1812
LanguageGerman

Other Translations / Adaptations

Text titleLanguageAuthorPublication Date
Rødhette og ulvenNorwegian__
RoodkapjeDutchM.M. de Vries-Vogel1940
Cappuccetto RossoItalian__
Η ΚοκκινοσκουφίτσαGreek__
Cô bé choàng khăn đỏVietnamese__
Красная ШапочкаRussian__
Den lille RødhætteDanish__
Kırmızı Başlıklı KızTurkish__
Capuchinho VermelhoPortuguese__
Caperucita RojaSpanish__
Si Kerudung MerahIndonesian__
小红帽Chinese__
Rdeča kapicaSlovenian__
หนูน้อยหมวกแดงThai__
Little Red Riding HoodEnglishMargaret Hunt_
Czerwony KapturekPolish__
Червона ШапочкаUkrainian__
CrvenkapicaCroatian__
Puka KapirusitamantaQuechua__
Le Petit Chaperon RougeFrench__
Scufița RoșieRomanian__
La caputxeta vermellaCatalan__
PunahilkkaFinnish__
Piroska és a farkasHungarian__
Piros sapkácskaHungarianBenedek Elek_
O Červené KarkulceCzech__
ATU333
LanguageJapanese
OriginGermany

むかし、むかし、あるところに、ちいちゃいかわいい女の子がありました。それはたれだって、ちょいとみただけで、かわいくなるこの子でしたが、でも、たれよりもかれよりも、この子のおばあさんほど、この子をかわいがっているものはなく、この子をみると、なにもかもやりたくてやりたくて、いったいなにをやっていいのかわからなくなるくらいでした。それで、あるとき、おばあさんは、赤いびろうどで、この子にずきんをこしらえてやりました。すると、それがまたこの子によく似あうので、もうほかのものは、なんにもかぶらないと、きめてしまいました。そこで、この子は、赤ずきんちゃん、赤ずきんちゃん、とばかり、よばれるようになりました。  ある日、おかあさんは、この子をよんでいいました。 「さあ、ちょいといらっしゃい、赤ずきんちゃん、ここにお菓子かしがひとつと、ぶどう酒しゅがひとびんあります。これを赤ずきんちゃん、おばあさんのところへもっていらっしゃい。おばあさんは、ご病気でよわっていらっしゃるが、これをあげると、きっと元気になるでしょう。それでは、あつくならないうちにおでかけなさい。それから、そとへでたら気をつけて、おぎょうぎよくしてね、やたらに、しらない横道へかけだしていったりなんかしないのですよ。そんなことをして、ころびでもしたら、せっかくのびんはこわれるし、おばあさんにあげるものがなくなるからね。それから、おばあさんのおへやにはいったら、まず、おはようございます、をいうのをわすれずにね。はいると、いきなり、おへやの中をきょろきょろみまわしたりなんかしないでね。」 「そんなこと、あたし、ちゃんとよくしてみせてよ。」と、赤ずきんちゃんは、おかあさんにそういって、指きりしました。  ところで、おばあさんのおうちは、村から半道はなれた森の中にありました。赤ずきんちゃんが森にはいりかけますと、おおかみがひょっこりでてきました。でも、赤ずきんちゃんは、おおかみって、どんなわるいけだものだかしりませんでしたから、べつだん、こわいともおもいませんでした。 「赤ずきんちゃん、こんちは。」と、おおかみはいいました。 「ありがとう、おおかみちゃん。」 「たいそうはやくから、どちらへ。」 「おばあちゃんのところへいくのよ。」 「前かけの下にもってるものは、なあに。」 「お菓子に、ぶどう酒。おばあさん、ご病気でよわっているでしょう。それでおみまいにもってってあげようとおもって、きのう、おうちで焼いたの。これでおばあさん、しっかりなさるわ。」 「おばあさんのおうちはどこさ、赤ずきんちゃん。」 「これからまた、八、九町ちょうもあるいてね、森のおくのおくで、大きなかしの木が、三ぼん立っている下のおうちよ。おうちのまわりに、くるみの生垣いけがきがあるから、すぐわかるわ。」  赤ずきんちゃんは、こうおしえました。  おおかみは、心の中でかんがえていました。 「わかい、やわらかそうな小むすめ、こいつはあぶらがのって、おいしそうだ。ばあさまよりは、ずっとあじがよかろう。ついでにりょうほういっしょに、ぱっくりやるくふうがかんじんだ。」  そこで、おおかみは、しばらくのあいだ、赤ずきんちゃんとならんであるきながら、道みちこう話しました。 「赤ずきんちゃん、まあ、そこらじゅうきれいに咲いている花をごらん。なんだって、ほうぼうながめてみないんだろうな。ほら、小鳥が、あんなにいい声で歌をうたっているのに、赤ずきんちゃん、なんだかまるできいていないようだなあ。学校へいくときのように、むやみと、せっせこ、せっせこと、あるいているんだなあ。そとは、森の中がこんなにあかるくてたのしいのに。」  そういわれて、赤ずきんちゃんは、あおむいてみました。すると、お日さまの光が、木と木の茂った中からもれて、これが、そこでもここでも、たのしそうにダンスしていて、どの木にもどの木にも、きれいな花がいっぱい咲いているのが、目にはいりました。そこで、 「あたし、おばあさまに、げんきでいきおいのいいお花をさがして、花たばをこしらえて、もってってあげようや。するとおばあさん、きっとおよろこびになるわ。まだ朝はやいから、だいじょうぶ、時間までに行かれるでしょう。」 と、こうおもって、ついと横道から、その中へかけだしてはいって、森の中のいろいろの花をさがしました。そうして、ひとつ花をつむと、その先に、もっときれいなのがあるんじゃないか、という気がして、そのほうへかけて行きました。そうして、だんだん森のおくへおくへと、さそわれて行きました。  ところが、このあいだに、すきをねらって、おおかみは、すたこらすたこら、おばあさんのおうちへかけていきました。そして、とんとん、戸をたたきました。 「おや、どなた。」 「赤ずきんちゃんよ。お菓子とぶどう酒を、おみまいにもって来たのよ。あけてちょうだい。」 「とっ手をおしておくれ。おばあさんはご病気でよわっていて、おきられないのだよ。」  おおかみは、とっ手をおしました。戸は、ぼんとあきました。おおかみはすぐとはいっていって、なんにもいわずに、いきなりおばあさんのねているところへ行って、あんぐりひと口に、おばあさんをのみこみました。それから、おばあさんの着物を着て、おばあさんのずきんをかぶって、おばあさんのお床とこにごろりと寝て、カーテンを引いておきました。

 赤ずきんちゃんは、でも、お花をあつめるのにむちゅうで、森じゅうかけまわっていました。そうして、もうあつめるだけあつめて、このうえ持ちきれないほどになったとき、おばあさんのことをおもいだして、またいつもの道にもどりました。おばあさんのうちへ来てみると、戸があいたままになっているので、へんだとおもいながら、中へはいりました。すると、なにかが、いつもとかわってみえたので、 「へんだわ、どうしたのでしょう。きょうはなんだか胸がわくわくして、きみのわるいこと。おばあさんのところへくれば、いつだってたのしいのに。」と、おもいながら、大きな声で、 「おはようございます。」 と、よんでみました。でも、おへんじはありませんでした。  そこで、お床とこのところへいって、カーテンをあけてみました。すると、そこにおばあさんは、横になっていましたが、ずきんをすっぽり目までさげて、なんだかいつもとようすがかわっていました。 「あら、おばあさん、なんて大きなお耳。」 「おまえの声が、よくきこえるようにさ。」 「あら、おばあさん、なんて大きなおめめ。」 「おまえのいるのが、よくみえるようにさ。」 「あら、おばあさん、なんて大きなおてて。」 「おまえが、よくつかめるようにさ。」 「でも、おばあさん、まあ、なんてきみのわるい大きなお口だこと。」 「おまえをたべるにいいようにさ。」  こういうがはやいか、おおかみは、いきなり寝床からとびだして、かわいそうに、赤ずきんちゃんを、ただひと口に、あんぐりやってしまいました。

 これで、したたかおなかをふくらませると、おおかみはまた寝床にもぐって、ながながと寝そべって休みました。やがて、ものすごい音を立てて、いびきをかきだしました。  ちょうどそのとき、かりうどがおもてを通りかかって、はてなと思って立ちどまりました。 「ばあさんが、すごいいびきで寝ているが、へんだな。どれ、なにかかわったことがあるんじゃないか、みてやらずばなるまい。」  そこで、中へはいってみて、寝床のところへ行ってみますと、おおかみが横になっていました。 「ちきしょう、このばちあたりめが、とうとうみつけたぞ。ながいあいだ、きさまをさがしていたんだ。」  そこで、かりうどは、すぐと鉄砲をむけました。とたんに、ふと、ことによると、おおかみのやつ、おばあさんをそのままのんでいるのかもしれないし、まだなかで、たすかっているのかもしれないぞ、とおもいつきました。そこで鉄砲をうつことはやめにして、そのかわり、はさみをだして、ねむっているおおかみのおなかを、じょきじょき切りはじめました。  ふたはさみいれると、もう赤いずきんがちらと見えました。もうふたはさみいれると、女の子がとびだしてきて、 「まあ、あたし、どんなにびっくりしたでしょう。おおかみのおなかの中の、それはくらいったらなかったわ。」と、いいました。  やがて、おばあさんも、まだ生きていて、はいだしてきました。もう、よわって虫の息になっていました。赤ずきんちゃんは、でも、さっそく、大きなごろた石を、えんやらえんやらはこんできて、おおかみのおなかのなかにいっぱい、つめました。やがて目がさめて、おおかみがとびだそうとしますと、石のおもみでへたばりました。  さあ、三人は大よろこびです。かりうどは、おおかみの毛皮をはいで、うちへもってかえりました。おばあさんは、赤ずきんちゃんのもってきたお菓子をたべて、ぶどう酒をのみました。それで、すっかりげんきをとりかえしました。でも、赤ずきんちゃんは、(もうもう、二どと、森の中で横道にはいって、かけまわったりなんかやめましょう。おかあさんがいけないと、おっしゃったのですものね。)と、かんがえました。


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